「統合失調症は早期発見が重要」というテレビ番組(BS朝日)|精神医療の真実 聞かせてください、あなたの体験
3月3日の午後4時半から、BS朝日の『メディカル プロジェクト』という30分番組で統合失調症についての特集があった。
その日私は、『うつ病治療の最前線』という市民公開講座を聞きに行っていたが、録画したものを今日見ることができた。
市民公開講座でも国立精神・神経医療研究センターの総長、樋口輝彦氏が講演をしたのだが、同じ時間のテレビにも同氏が出ていたとは……ずいぶんご活躍である。
樋口氏は講演慣れ、しゃべり慣れしているためか、話す内容はいかにも教科書的で、正直、つまらない。それは、講演でも、テレビでも同じで、突っ込まれないような言葉選び、話題選びに長けているという印象を受けた。
さて、テレビの内容だが、まず、樋口氏曰く。「21世紀は脳と心の時代」だそうだ。なぜなら、これもいつも言われることだが、一生のうち、5人に1人が何らかの精神疾患にかかる、そういう心の危機的状況に日本はあるからであると。
そして、統合失調症の有病率は100人に1人、というのもいつもの数字の紹介である。
診断と検査というところでは、またしても、光トポグラフィの登場だ。
光トポグラフィというのは、たとえば「と」のつく言葉を可能な限り言いつづけ、その間の血流、ヘモグロビンの量を測って、そのパターンによって、うつ病と躁うつ病と統合失調症の診断がつくというもの。
犬の渓谷熱のフルコナゾール
客観的な診断基準や検査がなかったこれまでの精神医療において、この光トポグラフィは、客観性があるということを示して、一般の人を納得しやすくさせているという一点においてのみ、利用価値があるように感じられる。本当に、あんな検査で診断が下るのなら、誤診の問題は解決済みになるはずだ。
後半には「統合失調症の早期発見と治療方法」ということで、いよいよ、都立松沢病院の岡崎祐士氏の登場である。松沢病院では15歳から25歳までの若者の心のトラブルについて無料で相談を行っていると病院を紹介したあと、氏はこんなふうに言っていた。
「発症してからなるべく早く、たとえば1年未満の方と、1年以上の方を比較するという研究が、1986年、イギリスで行われています。
(これはおそらく、
から引っ張ってきた研究と思われる)。
それによると、早く治療を開始すれば、薬物治療を行わず精神療法だけの治療を行った群のほうが、遅く薬物治療を開始した群より成績がよかった。成績がよいというのは、入院が少ないとか、生活能力の低下が少ないとか、自殺が少ないということです」
(これをこのまま解釈すれば、統合失調症は早く発見できれば、薬物治療は行わなくてもいいような言い方だが、その前の段階で、樋口氏は、統合失調症の急性期(なり始めの頃)は、薬物療法が原則であると明言してしまっている)。
さらに岡崎氏は、早期発見ということで、海外での活動を紹介している(ここでオーストラリアが登場する)。
中毒の眼弱視胎児の吸収につながる
「これは、オーストラリアの例ですが、たとえば、命を大事にする教育(『Educating For LIFE』)や、心の抵抗力をつける教育(『Educating Resilience』)といった具合に、中高生を対象とした教科書が作られています。
自分の周囲にいる4人に1人、あるいは5人に1人が生涯のうちに何らかの精神的問題を抱える。そのときに、早く気づいてあげて、相談に乗ってあげたり、声かけをしてあげることができるようになりましょうという、(これは)非常に大きな国家的な目的をもってやられている教育なんですね。
我が国でも、ぜひこういったことが実現するといいなと思ってます」
早期介入において、実際にはどのようなことが行われるのか、そうした紹介は一切なく、精神疾患への偏見をなくして、みんなで「困っている人」を探して、助けてあげましょうといった教育をすることが、病気の早期発見の意義であるかのようなストーリーの作り方は、司会者も含めて、統合失調症有病率が100人に1人という時代、確かに大切なことであるかのような錯覚を一般の人に与えるものだと思う。
しかし、ここで岡崎氏が明らかに言っているのは、オーストラリアのような「早期介入」を日本でも「国家的な大きな目的をもって、実現できるといいな」ということなのだ。
その岡崎氏が院長を務める松沢病院において、統合失調症(と診断された)患者に対して、いかなる治療が行われ続けているか……。
心臓の痛みとベーキングソーダ
抗精神病薬のマックス処方による過鎮静、拘束、隔離という実態(実際、被害者は大勢いて、先日もその話を聞いたばかりだ)――そのような治療が「ふつう」に行われている病院において、若者を対象に「無料の相談」を受け付けて、その結果医療につなげようとしているのは、ある意味背筋の寒くなるような現実である。
そもそも統合失調症の治療として行われるのは「鎮静」である。そういう思想しかもちあわせてはいないのだ。
まして、統合失調症かどうか、その診断そのものの精度の低さ――光トポグラフィに頼りますか? まして、早期の発見など研究においても「不可能」に近い数字しか出すことができない状況で、「病気ではない子供たちを病気として治療することの弊害」には一切触れないまま、こうした放送で専門家と言われる人たちの意見が一方的に垂れ流されているのである。
「統合失調症は早期発見が重要」--そもそも、この日本語には大きな矛盾が含まれている。
しかも、岡崎氏のあと樋口氏が語ったのは、現在の「進歩」した統合失調症のための薬についてだ。早期発見されることなく、治療抵抗性となった人にも、まだ救いはあると言いたいのだろうか。つまり、治療抵抗性統合失調症に対する新しい薬、一般名は出さないものの、要は「クロザピン」の紹介である。
そして、東京女子医科大学の石郷岡純医師が登場し、7年くらい統合失調症で入退院を繰り返した女性が、3年前この薬が使えるようになったことで(承認が2009年なので)みるみるよくなり、本人だけでなく、家族もたいへん喜んでいた、というのである。
しかし、このクロザピンには重篤な副作用(無顆粒球症・血球障害)があり、1975年にフィンランドで、8例の死亡例を含む16例の無顆粒球症が報告され、主要国での開発・販売はこの時点で中断。現在97か国で使われているとはいえ、アメリカで開発が再開された80年代まで、30年近く開発・販売を中断している国がほとんどだったという薬なのだ。
しかも、樋口氏は、この薬を「これまで反応しなかった薬にも、新しい薬には反応することもある」と表現しているが、上記にもある通り、クロザピンは決して新しい薬ではない。
こんなふうに話の中に少しずつ嘘を含ませ、事実が少しずつ捻じ曲げられ、一見しただけでは、とてもよいこと、素晴らしいことが行われようとしているかのような印象を人々に与えるやり方は、もしかしたら詐欺師の常套手段かもしれない。
樋口氏の番組結びの言葉である。
「できるだけ早い時期に気づいて、専門家に診てもらい、早い時期に治療を開始するのが一番大事なことだと思います」
こんな耳触りのいい言葉の中に、どれほどの嘘や隠ぺい、事実の捻じ曲げが含まれているか……しかし、一般の人には(いや、一部(か大多数かわからないが)の当事者や家族にとっても)こうした理屈は受け入れにくく、理解されにくい。
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