痔の原因は洋式便所?
掲載2010年4月7日
内容紹介・訳者メモ
糖尿病と同様、痔もパンデミック状態である。最近は何でもワクチンだが、まさか痔のワクチンはないだろう・・・
原文のタイトルは「痔かどうか確認する方法」であるが、和式便所のスクワット姿勢が痔の予防・治療に良いことが指摘してあるのが興味深いので、訳文のタイトルはそちらにしておいた。今や公共の便所でも洋式が多く、家庭でも洋式が多いだろう。一般的には、ウォシュレットが痔に良いと言われているが、通常、ウォシュレットは洋式便所とセットになる。
食べ物については、既に何件か記事を紹介してきたが、やはり同時に排便のことも忘れてはならないだろう。いくら上品な都会のマンションに住んでいても、人間はやはり有機物であり、便の処理が必要である。排便によって我々は生物であることを実感できる。
住環境におけるトイレの有り方についても、再考が必要かもしれない。汚いものとして水で流すだけで本当に良いのだろうか。Ecological Sanitation(生態学的な衛生処理)という考え方がある。具体的には、山小屋などに設置されているバイオトイレ(コンポストイレ)のように、微生物の分解能力で堆肥化する。昔の肥溜めに似ているが、一定の温度を保ったオガクズを便槽とし、それを攪拌して微生物の活動を維持するため、殆ど無臭のようである。温度の維持や攪拌の動力に電力が必要な点は工夫が必要だが、生ゴミの処理も兼ねることができる。生ゴミ処理機といえば、なるべく水分を除去して投入しなければならないものだと思っていたが、バイオトイレの場合、逆にある程度水分が必要なので、そのまま投入した方がよい。
バイオトイレと同じ考えで、生ゴミ用にダンボールコンポストというのがあり、これはマンションでも利用可能だろう。なお注意点として、オガクズがタダで入手できる場合は別だが、ピートモスなどを買っていると、ゴミ袋より高くつく。園芸用の土を買うことを思えば良いかもしれない。
昔は、家庭に電話回線は一本しかなかったが、今は一人ひとり携帯電話を持つ時代だ。今でもトイレは常識的に共用スペースということで、狭く隔絶された空間になっている。トイレまでエアコンをきかせている家は少ないだろうから、冬は寒く夏は暑い。携帯トイレとバイオ処理を組み合わせて考えると、流すための水まわりは不要(尻を拭くのに若干の水が必要だろう)だから、これからは自分トイレが有望かもしれない。例えば窓から眺めの良い部屋で音楽でも聴きながら優雅に用を足す。これが真の贅沢、生活水準の向上ではなかろうか。
そして、優雅に用を足すためには、痔で苦悶していてはならない。
ビタミン良いにきび肌
痔というのは、あまり楽しい話題ではない。相手が医療の専門家であっても話すのを躊躇したくなる。だが、男女を問わず、実に一般的な問題である。国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIHの管下機関)によると、米国人のおよそ半分が50歳までに痔を抱えると推定している。
典型的な西洋の食事に、ストレスが多く運動不足の生活スタイルが加われば、ぜんぜん不思議でないことだ。痔は、現代西洋社会だけの病気ではないが、工業化が進んでいない、より原始的な社会では、それほど一般的な病気でないことも確かだ。
正確に言うと、痔とは何か?
痔は、直腸と肛門の壁にある静脈である。静脈がよじれて、腫れて、炎症が起きた状態だ。内部に形成されるもの(内痔)と外部に形成されるもの(外痔)がある。形成された痔核は痛みと出血を引き起こす。
肛門の内部で、直腸と肛門の接合部(歯状線)より上に痔があるなら、内痔核だ。歯状線より下で、肛門周囲の皮膚内にあるならば、外痔核と思われる。いずれのタイプの痔も、肛門の中に留まることもあれば、肛門の外に突出することもある。
どのように痔核は形成されるか?
最も良くあるケースとしては、排便しようとしていきみ、圧力をかけることによって形成される。痔は、慢性的な消化障害(特に便秘)を抱える人に、よく見受けられる。年配の人や、妊娠中にもよく生じる。妊婦の場合、胎児の成長によって子宮に圧力が加わることで痔になることがある。出産で更に悪化することもあるが、妊娠によって生じた痔は、通常は、出産後に解消する。
痔のよくある原因としては、肥満もある。太りすぎの身体では、腸を通じて排泄するための適度な力が得られないという単純な理由である。
痔を確認する方法
痔を抱えていても、症状が出るときと出ないときがある。大部分の場合、症状が出ても、適切な手当をすれば、数日で症状は消える。
内痔の場合、最も一般的な兆候は、鮮やかな赤色の血である。トイレットペーパーや便器で確認することができるだろう。内痔核であっても、肛門から外にはみだすこともありうる。その場合には、ヒリヒリしたり、痛みを感じることだろう。
外痔であるならば、肛門の周囲が腫れたり、塊(凝血)が生じたりするだろう。これらは血栓性の外痔核と言われ、非常に痛い。
排便習慣によっては、更に問題が悪化し、余計に痛みや出血、痒みを惹き起こす(痔核からの排膿が痒みを生じることもある)。痔を患っているならば、便通の際に、いきんで圧をかけないことが大事だ。肛門部を過剰にこすったり、洗浄することも、問題を悪化させる可能性がある。
痔の症状に似ている病気としては、肛門の膿瘍、裂け、異常導管、不特定の痒みや痛み(一般的に肛門掻痒という)がある。
altace横隔膜麻痺
直腸に出血がある場合の注意
痔による出血と疑われる場合、医師もしくは医療専門家に相談することをお勧めする。特に今まで出血したことがない人は注意した方がよいだろう。直腸からの出血は、もっと深刻な他の病気の兆候である可能性もある。例えば、結腸直腸ガンである。特に年配者の場合は注意が必要だ。
先述の通り、鮮やかな赤い血は、痔の兆候であることが多いが、年齢を問わず、今までになく突然に出血した場合は、検査を受けるべきだ。
興味深いことに、大腸ガンのリスクを減らす最善策の一つは、ビタミンDである。ビタミンDの濃度を最適化することで、80%もリスクを減らすことができる。だから、ビタミンD濃度をチェックするようにして、年間を通じて60ng/ml前後を維持するよう努めれば、強力な予防策になる。
何よりも痔を予防することが第一である
痔は、多くの場合、便秘のために圧力をかけることで発生する。
便秘は、不適切な食事、運動不足、水分の摂取不足、ストレスが原因であることが多い。その他の原因として、下剤の濫用、過敏性腸症候群、甲状腺機能低下症もある。
以下の単純な方法で、便秘は予防できる。
(1)繊維の豊富な食べ物を摂る。繊維を摂る源としては、野菜が一番である。理想的には、あなた自身の個別の栄養形式に合わせて推薦されるものを食べると良いだろう。多様な野菜の繊維を摂取することで、便が腸を快適に通過するのに必要な容積(カサ)が得られる。もっと繊維が必要ならば、ホール(未精製)の有機栽培フラックスシード(亜麻仁)をお勧めする。コーヒー・ミルで粉末にし、大さじ1~2杯を食べ物に加えればよい。また、有機栽培のオオバコも良いかもしれない。便秘と下痢の両方を緩和する効果がある。有機栽培でないオオバコ(例えばMetamucil)は避けた方がよい。あまり繊維質のものを食べることに慣れていないならば、徐々に慣らしていくと良いだろう。消化器系が繊維の増加に慣れていく際に、腹部の鼓� �感とガスが発生するのを経験するだろう。
(2)フラボノイドを摂取するために新鮮なオレンジを食べる。フラボノイドは、静脈を健康にする強力な植物性化学物質である。食事にココナッツオイルを加えるのも良いだろう。南太平洋の熱帯の島の人々は、脂肪分の半分以上をココナッツオイルで摂取していることが知られている。その結果、西洋社会で典型的な病気の多く(痔など)が、稀である。私の個人的な推薦は、ピュア・バージン・ココナッツオイルである。
(3)ただの水(天然水か逆浸透で濾過した水)をたくさん飲む。のどの渇きと尿の色で、水分の摂取が十分かどうかを判断できる。尿は、薄い黄色でなければならない。もしも濃い黄色ならば、水を飲む量が足りていない(通常、明るい黄色は、ビタミンB2のせいである。多くのマルチ・ビタミンに入っている)。適度な水分があれば、柔らかい便になる。便が柔らかければ、腸内を通過し易く、排便時の圧力も少なくてすむ。
不安の健康面
(4)消化管を刺激するよう定期的に運動する。
(5)身体に良い高品質の菌を摂取する。腸内のバクテリアのバランスをとることは、便秘だけでなく、全体的な健康に良いことだ。
(6)感情・ストレスを制御する。便秘の一因となりうる感情ストレスを軽減するために、経絡の刺激(針)などの技術を利用することを特にお勧めする。痔の炎症の痛みを軽減・除去することにもなる。
それから、あまり気付いている人はいないが、スクワット式のトイレ(和式便所)も、一つの手法だ。昨年インドに行ったが、面白いことに、普通のトイレは滅多になく、多くの場所では床に穴が空いているだけだった。そのようなトイレであれば、まさに排便のために想定されている通りの姿勢をとることができる。
普通の(洋式)トイレに座ると、排便を支える多くの力が奪われる。といっても、今から家のトイレの床に穴を空けるべきだと言っているわけではない。スクワット姿勢を取ることができるようにトイレの周囲に設置する機器がある。それを使えば、排便のときに随分と楽になるだろう。
良い排便習慣を実践する
・衝動を感じたらいつでもトイレに行けるようにして、身体が自然に排便できるようにするのが良い。便意を感じたらすぐにトイレに行くことだ。後回しにすると便秘が悪化する。
・あまり長い時間、トイレに座らない方がよい。直腸にかかる圧力が増してしまう。まさにやってはいけないことだ。トイレに座る時間は、3~4分以内に限る方がよいだろう。必要に応じて、立ち上がって歩き回り、気を紛らわせて、再びトイレに行きたくなる衝動を感じるまで待つべきだ。小さな足載せ台を使って、トイレに座っている間に腫れた部分に圧力がかかるのを防ぐ方法もある。
・排便させようとして過剰にいきまないこと。ゆっくりと力を入れるに留め、それも一度に30秒以上は続けないことだ。腹部と骨盤の筋肉を使うように集中する。
・スクワット姿勢を取ること。排便のときにスクワット姿勢をする国では、あまり痔は見受けられない。1980年代後半に発表された調査結果では、痔の患者の20人に18人が、スクワット式のトイレを使うことで、痛みと出血から完全かつ継続的に解放されている。
適切な洗浄と尻拭きの習慣
・トイレットペーパーなどの尻拭きで、強くこすらないように。腫れた皮膚を悪化させ、さらにヒリヒリすることになる。
・できれば石鹸を使わず、風呂かシャワーで洗浄するのが良い。石鹸は刺激物である。よく洗い落とし、やさしく柔らかいタオルで軽く叩いて乾かす。
・風呂やシャワーが使えない場合、使い捨てのウェットティシュでゆっくりやさしく拭き取る。
家庭内での痔対策
・痔で悩んでいるなら、ナギイカダ(ハーブのエキス)を利用できる。強力な抗炎症作用と血管収縮効果がある。静脈を引き締め、強くすることができる。特に静脈に関する症状に使用されている。静脈の壁を強化するため、便通の際に圧力がかかっても、膨張して引き伸ばされなくなる。
他に有益な補助食品(サプリメント)としては、トチノキ、ブロメライン、エンジュのエキス、アロエ・ベラのエキスがある。
・腰湯。腰湯というのは、臀部を温水につけることである。浴室の湿気と熱で、症状が緩和し、腫れた組織を癒すことになる。熱水ではなく、温水を使い、何も加えないこと。一回につき10~15分つかるようにし、回数は、症状を和らげるのに好きなだけ行えばよい。
・冷湿布または氷嚢を、肛門の部位につけたり離したりする。1回につき10~15分間で、1日につき最高5回までにする。
・肛門部を乾いた状態にすること。湿気によってヒリヒリしたり、かゆくなったり、感染の原因になる。
・炎症を起こしている部位を鎮静化させるため、肛門にワセリンを塗る。焼けるような痛みを緩和させるには、アロエ・ベラのジェルも良い。マンサクなどの局所収斂剤もある。
・便通の後、マンサク(多くの店舗の薬売り場にある)を浸した湿布か綿布をトイレットペーパーとして拭く。
病院での治療
深刻な症状の場合、外科手術や内視鏡を使った治療が必要になることがある。だが、これは最後の手段だ。
医療行為としての痔の治療には、以下のようにいくつかの技術がある。
・ゴムバンドでの結束。ゴム製のバンドで痔の基底部を括る。そうすることで痔核に血液が流れないようになり、痔核が死に、数日内に萎縮する。
・硬化療法。痔を萎縮させるために化学溶剤を注入する。
・レーザー凝固法。痔の組織を焼く。
・痔核切除。外科的に痔核を除去する。
痔のような病気は、そもそも治療しなくて済むように、常に予防しておくのが一番だ。痛みや炎症を伴う病気の多くはそうであるが、痔もやはり、身体からの注意信号だ。もっと食事に気を付け、水分の補給・運動を忘れないようにし、感情面のストレスなど生活スタイルに気を配るようにという身体からの警告である。
(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)
原文の紹介
原文 How Do You Know if You Have Hemorrhoids... or Something Serious?
マーコラ博士の医療情報 Mercola.com
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