2012年4月26日木曜日

自閉症児の自傷行為について :: Machimachi(●'ー'●)blooooog


お久しぶりです。この春から新社会人となって病院に勤務しているmachiです☆
社会人になって2ヶ月が経ち、徐々に自分の役割や仕事がわかってきたかな、という感じです。悩みは尽きませんが、やりたかった仕事につけた今の環境に感謝して、趣味もしっかりやりながら充実した生活を送っています!!!(´∀`●)

さて、先日、重度の自閉症女児が病院へ来ました。
言葉の遅れが顕著だったため、STを希望とのことだったのですが、同時に自傷行為もあるお子さんでした。詳しいことはここでは伏せますが、自分の勉強不足を痛感し、自傷行為に関する本を読んでみました。忘れないようにまとめておきたいと思います。

「自傷行為 実証的研究と治療指針」
B. W. ウォルシュ, P. M. ローゼン著 松本俊彦・山口亜希子訳

第8章 精神遅滞と自閉症における自損行為

自傷行為(self-multilative behavior ; SMB)
自損行為(self-injurious behavior ; STB)

自損行為への介入法
・消去(Hamilton, Stephen, & Allen, 1967 ; Tate & Baroff, 1966 ; Fester, 1961)
・タイムアウト法(Wolf, Rinsley, & Mees, 1964 ; Hamilton et al., 1967)
・拮抗する行動に対する正の強化(Corte, Wolf, & Locke, 1971 ; Repp, Deiz, & Deiz, 1976)
・自損行為の頻度が低い状態への強化(Deiz & Repp, 1973 ; Schaefer, 1970)

上記の技法が自損行為を減少させることに成功し、また、自損行為の精神生理学的レベルでの理解が深まるにつれて、自損行為の病因に関してもいくつかの理論的仮説が提唱されるようになった。Carr (1977)による4つの仮説は以下の通り。自損行為は複数の要因が相互に関係しあうことで出現している症例もあり、いくつかの要因が独立したまま存在し、その結果として自損行為が出現している症例もある。

自損行為の原因に関するさまざまな仮説
仮説1:脳器質的要因
「器質性障害仮説」自損行為は器質性障害の1症候として捉えられている
レッシュ・ナイハン症候群(男性のみ・X染色体に関連した遺伝性疾患・精神遅滞・運動機能や生理的機能の異常を呈する大脳皮質の障害)
自分の指や舌や唇をくりかえし噛む(環境要因や後天的に学習されたものとは関係ない)


疲労ノッチrdius

器質的な原因が突き止められていない場合には、その自損行為の原因が機能的なものなのか、あるいは、単に器質的な原因が診断されていないだけなのか、という点は依然明らかにはなっていない。

仮説2:知覚刺激の不足
動物実験で、極度の剥奪状況によって、全体的に発達が障害されることが明らかにされている(Cross & Harlow, 1956 ; Harlow & Harlow, 1971)。知覚刺激の不足が異常行動と著しい機能障害をもたらす可能性がある。

知覚刺激の不足が起こる状況
@環境のなかに知覚刺激が欠けている(退屈で単調な施設の生活から解放されるわずかなひとときが、まさに自身を痛めつけているときということになりかねない環境)
A人の方に知覚入力のプロセスや知覚の需要に関する能力の障害がある

仮説3:正の強化
 発達障害児は、適切な方法で環境から強化因子を引き出すという社会的スキルを欠いていることが多く、問題行動(とりわけ危険な問題行動)は、大抵の場合はただちに重要な他者に気づかれるものであるが、特に、自損行為の場合は、家族や治療スタッフのケア行動を引き出しやすい→つまり、精神遅滞や自閉症の患者が、自分の身体に損傷を 与えることで、生活環境に存在する人たちの注意と関心を喚起することを学んでしまう過程がある!!

仮説4:負の強化
 人が自損行為をすることで、不快なことを避けたり逃げたりする場合にも、学習はなされている。同時に養育者が被養育者にさせようとしていることを諦めれば、自損行為は止まる(一種の悪循環が確立されてしまう)。また、間歇的な負の強化を受けている場合が多く、その後の自損行為への対応を難しくする。


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統合的な自損行為の評価と治療
 症例ごとに、自損行為の原因・誘因がどのようなものであるかを評価すること
・自損行為を引き起こすような器質的な原因が存在する可能性を念頭に置いて検査を行う
・生活環境における知覚刺激の程度が妥当なものであるかどうか検討する
・自損行為の出現を促し維持させている、正の強化因子も同定されるべき
・負の強化となってしまっているような回避状況にも注意を払うべき
→ これらの要因の中に1つでも自損行為に関係しているものがあれば、その要因を取り除くための治療を行うべきである(医学的治療、環境調整、その両方)

コミュニケーションとしての自損行為
 精 神遅滞や自閉症患者は、他者に自分の欲求や感情を伝える能力が驚くほどに障害されていることが多い。彼らが堪え忍ばねばならないフラストレーションは、まちがいなく相当なものである。かんしゃくや攻撃性のような行動の出現、あるいは自損行為には、しばしば鬱積したフラストレーションを解放するというはたらきがある。自損行為や他の行き過ぎた行動には重要な他者に対して、「そうじゃない」というメッセージが込められている。
 自損行為によるコミュニケーションは、一般に「私は困っている」というメッセージを表現している。このメッセージは不機嫌の原因、つまり、「何に困っているのか」が特定されていない漠然としたものである。
 コミュニケーションとして用いられる自損行為に対する適切な治療は 、その患者が、代わりとなる別の方法でコミュニケーションできるようになることを援助することである。精神遅滞や自閉症患者のなかには、未発達であるが十分な言語能力が潜在していたり、感情や欲求を表現できるようになるのに十分な認知能力をもっていたりする者もいる。そうでない者には、いくつかの感情を表現するために、サイン言語を用いることを教える方法もある。

自損行為の評価と治療
第1段階:情報収集 (治療計画の有効性を示す)


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第2段階:自損行為を維持している強化因子の除去
1.自損行為は、可能なかぎり、無視するべきである
2.自損行為をしたからといって、患者が気乗りしない活動や状況を免除するべきではない。可能なかぎり、患者にはそうした活動に参加することを求めるべきである。

第3段階:標的行動の選択
 肝心なのは、自損行為と拮抗する適応的な行動をどのようにして強化するか。自損行動ではない行動はすべて強化するという、広範な種類の行動を対象とした治療計画は、効果的であり、「副作用」は比較的少ない。
 標的症状として、たとえば、その患者が正の強化因子を受け取るためには、その際におとなしく、かつ、協力的であることを必要とす� �ような計画を作っても良い(対立行動文化強化)。コミュニケーションの手段として自損行為を用いる代わりに「私は怒っている」ことを表現する、ということを標的に設定しても良い(代替行動の形成)。

第4段階:強化因子の選択
 自損行為に変化をもたらすためには、自損行為を強化していたものをはるかに上回る報酬と感じられるような、強化因子を見つける必要がある。
 自損行為の頻度によって用いる強化も異なる。たとえば頻度の少ない自損行為であれば、「高価な」強化因子や簡単には使えない強化因子も採用できる(たとえば、外食、洋服)。高頻度(1日に20回以上)に見られる自損行為の場合、食べ物、飲み物、紙、鉛筆、ちょっとした物品、トークンなど高価でないものが強化因子として用いやすい。他 にも、音楽を聴く、散歩に出かける、静かな時間を過ごす、テレビを観る、写真を撮る、などの活動性強化子が考えられる。最も利用価値がある強化因子を見つけるには、注意深く観察し、実験を繰り返すことが必要である。
 同じ報酬が繰り返されると強化因子に飽きてしまうことが問題となる。複数の強化因子を用意しておき、必要に応じてその中から強化因子を選べるようにしておくと役立つ。長い時間自損行為を行わなかった場合に「ボーナス」を与えるのも良い。


第5段階:強化する期間を決める
 当初のうちは、強化を使わなくてもおとなしくできるようになるまで続けるという期間設定をすべきである。しかし、スタッフの労力がとてつもなく大きい。そのため、1日の中のある時間帯だけに絞って実施する必要がある。その時間帯だけでも自損行為の頻度が減少してきたならば、強化因子の提示間隔を広げていくことが可能である。極端に高頻度に強化を行う必要がなくなったならば、行動療法の実施時間を、スタッフの無理のない範囲で拡大していけば良い。

第6段階:シェイピングとフェイディング
 精神遅滞や自閉症患者で見られる自損行動の変化は、非常にゆっくりと進んでいく。スタッフには忍耐が求められる。シェイピングと� �ェイディングの導入はゆっくりと慎重に試みるべきである。強化プログラムを「間引いていく」ことが可能となるまでには、1年かそれ以上の定期的な強化が必要である。最終的には社会的な強化だけでも標的症状が維持できるようになると良い。

行動療法計画の各段階のまとめ
1.自損行為の頻度に関する情報を収集する
2.自損行為に影響を与えている可能性のある、不適切な正ないし負の強化因子を除去する
3.自損行為に拮抗する、強化の対象とする標的症状を決定する
4.患者の行動に変化をもたらすのに十分な効力を持つような強化因子を選択する
5.強化をどのくらいの頻度で、どのくらいの期間実施するのかを決める
6.行動の変化が起こり始めたならば、シェイピング、それからフェ イディングを開始する

※ タイムアウト法 を使用する場合、以下の点に厳重注意
1)その状況においてタイムアウト法を用いることの正当性
2)タイムアウト法を実施した場合の、自損行為による患者の身体損傷の危険性
3)タイムアウト法以外の、他の身体拘束の少ない治療法での有効性



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